2022 年 43 巻 p. 69-83
本稿の目的は,ヴェロネーゼのカナ婚宴図を学習材とし,中学校第2学年を対象に,読解的鑑賞の一環として,解釈に焦点を当てた鑑賞授業を実践し,生徒の解釈傾向を録音・録画やワークシートを使って分析・検討し明らかにすることである。本実践の雛型は,先立つ稿で提示した7段階学習モデルだが,これを根本的に組み直し,自由解釈を扱う第1部,講義主体だが対話型を採用した作品読解を基調とする第2部の,1時間完結型の二部構成の鑑賞授業を組み上げる。油絵具自体の物質特性に則る色や形,熟練した技能が齎す造形美,華麗な装飾処理,秀逸な意匠感覚,画中人物群を駆使した物語的演出,聖書記事を基盤とした豊饒な意味構築等が,鑑賞者に様々な解釈の切り口を与え,さらには解釈行為が主題理解を構成することにも繫がる側面を精査・検証する。