本稿は,中学3 年生を対象とした,アクリルガッシュを使用した自画像制作における,事前の技法練習の効果について検証するものである。そこでは,技法練習が生徒の作品に対する充足感を向上させるうえで有効に作用すると仮説をたてた。 実践後の質問紙調査の結果から,約7 割の生徒は自画像制作を通して充足感を得ていたことがわかった。更に生徒の感想から,技法練習による生徒の技能向上を基盤として,絵画制作に対する抵抗感を抑制する効果及び創造的な技能を発展的に活用させる効果の2 点が,充足感を高める要因として抽出された。技法練習が絵に対する苦手意識を克服させるとともに,着彩方法の可能性を広げ,一層の創意工夫を促していた。そのことにより,生徒らは創出した主題を技能と調和させ,より充足できる作品として実体化させていたのである。