抄録
本稿の目的は,倉橋惣三が幼年絵雑誌『コドモノクニ』『キンダーブック』等に求めた芸術性について明らかにすることである。研究方法として,倉橋の関連文献の分析・絵雑誌の装丁や童画等の芸術性・倉橋の児童芸術論及び鑑賞教育論との関連という三つの視点から考察を行った。その結果,倉橋は大正モダニズムの影響をうけた童画の造形美や雑誌の大きさ・紙質・色彩等の美的調和に対する従来の評価とは異なる視点で,その芸術性を特に岡本帰一の童画に見出し「幼年絵心」として捉えていたことが確認された。また,倉橋がこれら絵雑誌に託した真の幼児教育的ねらいは「鑑賞の教育」によって「人間性の完成」を目指し,子ども一人ひとりの心の向上を図ることに結びつくと考えられる。さらに,その先には,人類全体の向上として文化の進化・拡大を見据えていたことが示唆された。