美術教育学:美術科教育学会誌
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認知多様性に美術教育はどう貢献可能か
-アファンタジアを含めた認知多様性に対応するインクルーシブな美術教育 に向けて-
佐原 理
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2023 年 44 巻 p. 155-165

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抄録

我々の脳は単純な視覚入力に対して触覚を脳内で信号生成して受容している。しかしそうした映像的触覚知の形成は個人差があり,触覚刺激を誘発しない特性の者もいることをNIRS (近赤外分光法)を用いて明らかにした。そうした被験者に対し,触覚を強調する映像メディアの授業実践にまつわる作業を追加でおこなったところ,再度のNIRS調査では賦活することが認められ,美術教育上の活動によるシナプス可塑性が認められた。よって,美術教育は認知特性の開発効果があることが認められる。また,視覚的イメージを脳内で形成しないアファンタジアは3 %から4 %で出現し,さらに約4 割程度の人々は心的視覚イメージの想起が容易ではないことが予見された。本研究の結果は,認知多様性に基づくインクルーシブな個別最適化した表現・鑑賞のプロセス開発,心的視覚イメージ形成のサポートツール開発など,新たなフェーズで美術教育実践の開発をする必要性を示唆している。

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© 2023 美術科教育学会
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