抄録
本研究の目的は,芸術家/研究者/教育者の自己省察と探求の方法であるA/r/tography による協同探求の生成と探求者間の相互作用を明らかにすることである。研究目的を達成するために,それぞれのリサーチクエスチョンに対してムービーや写真を用いた探求者の事例に参与観察を行った。探求の生成について検討した結果,協力と展開,精緻化と深まり,発表と共有の三つのプロセスが確認された。複数の探求が重層的に絡み合うことで複雑化がもたらされ,探求と表現がリゾーム状に拡張されていくことが,探求者間の相互作用として確認された。探求者が自身のもつ様々な実践経験を踏まえて横断的に思考し,多角的に共有・対話・議論することで,探求が拡張されていく。このような探求の拡張が,本事例から見出されたA/r/tographyによる協同探求の可能性として示唆された。