抄録
本稿は,空間や場に着目した美術教育開発のための基礎的調査の観点から,オープンフォームと呼ばれる理論とその実践について教育と建築の空間という切り口から検討する。理論を提唱したオスカー・ハンセンが活動したポーランドにて,美術館学芸員に取材し,関連資料と照応して提唱者の思考や実践を読み取った。取材データ等の検討から,オープンフォームの理論と実践が展開された文脈として,教育の階層構造に対する問題提起,教育のための弁証法の構築,メタボリズム等の前衛的な建築の動向との対応,曖昧な境界的特性をもつ日本建築の参照可能性が明らかになった。今後の研究の手がかりとして日本の美術教育と社会との接続の観点から,オープン/クローズドの視点による空間や場の議論,身近な生活空間や建築への再注目,美術教育システムの柔軟性の考慮という視点を見出した。