抄録
本稿は『スイミー』の1 . 日本的受容実態, 2 . 作者の主題意識・意図, 3 . 作品の美術的本質という三者間のずれ(乖離)を明らかにし, 4 . そのずれを乗り越える鑑賞教育を検討した。1 . 教材も鑑賞者も日本的集団協力物語と受容する。スイミーが劣等感をもち仲間外れを回避・克服するため仲間と協力したという鑑賞者の受容もある。鑑賞者の感情移入対象も,集団内で安穏にいたい心情から小魚群に集中する。2 . 作者の主題意識・意図は,有能な芸術家の社会的使命である。3 . 作品の美術的本質として重要なのは,スイミーが独り海底で様々な生き物と出会い元気を取り戻す過程であり,鑑賞者の無意識への〈不可視の刺激〉となっている。4 . 児童生徒の実態に応じ,受容内容,作者の主題意識・意図,作品の美術的本質とのずれを止揚する弁証法的鑑賞教育への可能性を示した。