抄録
本研究は,鑑賞教育の拡張の可能性について考察することを目的とする。現行の中学校学習指導要領における鑑賞領域の内容イ(ア)を中心に,「生活や社会の中の美術や美術文化と豊かに関わる」ための授業を構想した。過去の学習指導要領の分析を通して鑑賞領域と生活との関係性を整理した上で,身の回りにある自然物や人工物などを対象にした鑑賞について,理論と実践の両面から調査を行った。実践にあたっては,まちを歩きながら任意のテーマに沿って周囲を観察し,造形的な見方を導き出す「そぞろみ部」の活動を踏まえ,中学校美術科の授業として提案した。作品としてつくられたものの提示にとどまらず,鑑賞者たる生徒自身が主体的に鑑賞の対象を見いだしていく過程に,フィールドワークの視点を導入する意義を見いだした。