抄録
本研究の目的は,シュタイナー学校の高等部における「芸術研究」の授業を事例として,芸術鑑賞の教育的意義を明らかにすることである。創始者ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner,1861-1925)の美術史に関する講義記録およびカリキュラムに関する文献を調査した。次にドイツのシュタイナー学校の生徒のエポックノートを分析し,授業内容を検討した。ノートからは作品の模写や解説,様式ごとの特徴,博物館見学の記録を確認することができた。これらの分析から,この授業は単なる美術史の知識伝達ではなく,芸術を人類の意識や精神の発展史として体験的に学ぶことを重視していることが明らかになった。本研究はその意味で,日本の中等教育における美術史の学習を,人間の内面や精神の発展と結びつけて再考するための教育的示唆を提示した。