主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 118-
【目的】世界三大珍味の一つとして知られるキャビアはチョウザメの卵を塩漬けにしたもので,熟成による高付加価値化が検討されている.本研究では,環境に優しい冷熱エネルギーとして注目されている「雪室」に着目し,雪室を活用したキャビアの長期熟成の影響について,熟成中の呈味成分,機能性成分および腐敗関連成分の変化を評価し,雪室熟成による高付加価値化の可能性について検討した.
【方法】アクアポニックスで養殖された雌のコチョウザメより卵を採取し,魚卵の3%量の岩塩を加え,キャビアを調製した.調製したキャビアを保存用ガラス容器に入れ,冷蔵(5.2±1.6℃)または雪室(0.7±0.1℃)にて保管し,0(対照区),30,60,90及び180日間の熟成を行った.熟成後のキャビアについて,揮発性塩基窒素,遊離のタンパク質構成・非構成アミノ酸およびイミダゾールジペプチドの含有量を測定した.
【結果】鮮度の指標である揮発性塩基窒素を評価した結果,冷蔵条件では熟成90日で初期腐敗の兆候が認められたのに対し,雪室では熟成90日でも新鮮状態を維持しており,熟成180日においても腐敗は認められなかった.冷蔵条件において腐敗が認められなかった60日までに熟成期間を限定し,遊離アミノ酸と機能性成分について評価を行った結果,遊離アミノ酸については同一熟成日数(冷蔵,雪室)での顕著な差異は認められなかったが,熟成期間が進むに従って遊離アミノ酸の増加が認められ,冷蔵,雪室のいずれにおいても呈味性アミノ酸であるグルタミン酸が熟成60日で約3倍に増加した.また,オルニチン,β-アラニンおよびイミダゾールジペプチド(カルノシン,アンセリン)等の機能性を有する成分についても熟成による含有量の増加が認められた.以上のことから,雪室を活用することで,腐敗の進行を抑えつつ,熟成による呈味成分・機能性成分の増加が期待できることが示された.