主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第71回大会
回次: 71
開催地: 名城大学
開催日: 2024/08/29 - 2024/08/31
p. 206-
【目的】
スパイスはポリフェノールをはじめとする機能性成分を豊富に含み,また特徴的な香りを持つことから食品や香料の原料として利用されている.Buiらは石臼による湿式微粉砕抽出であるSME(Simultaneous Milling and Extraction)法が,従来法である浸軟法と比較してポリフェノールを多く抽出できることを明らかにした.しかし,この方法によりスパイスから有用成分を抽出する場合,石臼が開放系の粉砕機器であることから,エタノールのように揮発しやすい溶媒を用いる場合得られる抽出物の収量は減少してしまう.また,溶媒と同様に目的とする香気成分が空気中へと揮散してしまう懸念がある.したがって,本研究ではSME法において,溶媒の揮発性による抽出物の収量,および揮発性が異なる成分の抽出量を検証した.
【方法】
溶媒にはエタノールと純水を使用し,エタノール濃度を0,30,50,70,100%となるように調製した.試料にはシナモンとクローブを用い,溶媒とスパイスの割合を10:1とした.試料をカッター式乾式粉砕機により5~10秒間粗粉砕を行った後,溶媒と混合し石臼へ投入した.石臼を用いた粉砕を3回繰り返し,抽出時間が30分間となるように調整した.粉砕後の試料は遠心分離機により液体と固形分を分離し,ろ過を行った.ろ過した溶液とヘキサンを1:10の割合で混合し,30分間超音波処理を行った.その後,分液ロートによりヘキサン層とエタノール(水)層ヘと分離した.ヘキサン層はGC/MSにより香気成分を,エタノール(水)層はHPLCによりポリフェノール類を測定した.
【結果】
エタノール濃度を高くするにつれて抽出物は濃く暗い色を示した一方で,その収量は減少した.また,エタノール濃度が低い溶媒では乳化が発生した.このことから,エタノール濃度によって抽出される成分が異なることが示唆された.