【目的】 褐藻類に含まれる高分子硫酸化多糖フコイダンは, 自然免疫細胞を活性化し, 腫瘍および感染免疫応答を増強することが報告されている. 一方で, 大腸等で生じる炎症に対して抑制効果を発揮することも知られており, 免疫機構の恒常性維持に働くことが期待される. 本研究では, ウイルス感染で生じる重症肺炎に対する高分子CUAフコイダン(オキナワモズク由来フコイダン, メカブ由来フコイダンおよびアガリクス菌糸体エキス末を混合した食品素材)の発症予防効果を検証した. 【方法】 本試験では, C57BL/6JマウスにTLRリガンド溶液(TLR3-L: 62.5 µg Poly(I:C), TLR4-L: 25 µg リコンビナントSARS-CoV-2スパイクタンパク質, TLR7-L: 5.0 µg Gardiquimod)を口腔咽頭投与することで肺炎モデルマウスを作成した. 2週間の馴化飼育後に, 30 mgのCUAフコイダン(対照群には, 同量の水)を2週間連日経口投与した後, 上記の感染刺激により肺炎を誘導して2日後の炎症病態を解析・評価した. 【結果】 肺炎を誘導した対照群マウスの肺では, 組織肥厚や単球浸潤などの顕著な炎症像が観察されたのに対し, CUAフコイダンを経口投与したマウス(フコイダン群)では, 肺組織における明らかな炎症緩和を認めた. また, 肺胞洗浄(BAL)液および血漿中の炎症性サイトカイン濃度を測定した結果, フコイダン群のIL-6産生量は対照群と比べて有意に低値を示した. 一方, BAL液中のIFN-αおよびIFN-γ濃度では, CUAフコイダン投与による低下を認めなかった. 加えて, BAL液中の白血球におけるClass II MHC分子の発現上昇は, フコイダン群と比較して対照群で顕著に上昇した. 以上, CUAフコイダンの継続摂取は, 上気道感染症における炎症(肺炎およびサイトカインストーム)の発症予防に寄与する可能性が示された.