日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[3Kp] 食品物性
穀類粉生地の付着性に関する可視化手法
*畑山 博哉佐藤 健
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p. 397-

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抄録

【目的】穀類粉生地の付着性は加水や茹で処理の影響を受けて変化する.異なる穀類粉を混合することによる付着性の変化が製造条件に影響を与えることもある.穀類粉生地の付着性を把握することは,食品ロスの軽減や衛生的な製造環境の確保に貢献できる可能性があるものの,混合生地の付着性については十分な知見が得られているとは言い難い.本研究では,生地の組織構造と付着性との関連付けが重要と考え,もち大麦粉を配合した穀類粉生地のたんぱく質およびでん粉の組織観察とFTIRイメージングによる水分分布評価について,付着性との関係性を検討した.その結果,付着性を可視化する手法について知見を得たので報告する.【方法】市販の麺用小麦粉にもち大麦粉を配合して生の穀類粉生地を作製し,段階的に茹で時間を変えたものを測定用試料とした.また,茹で上げ後,異なる温度で保存した生地も同様に測定用試料とした.付着性測定にはクリープメータ,水分分布の可視化には顕微FTIR,組織観察にはデジタルマイクロスコープおよび走査電子顕微鏡を用いた.【結果】茹で不足の穀類粉生地の付着性は高く,適切な茹で時間に近づくと抑制される傾向となった.茹で不足の生地組織を顕微鏡により観察すると糊化でん粉の分布が不均一となっており,FTIRイメージングの結果でも水分分布に偏りがみられた.これにより付着性と糊化でん粉の分布,水分分布との間に関係性が示唆され,もち大麦粉を配合した生地においても類似の傾向が確認された.一方,大麦粉配合生地を異なる温度で保管した場合は小麦生地との結果に差異が生じたことから,茹でのび等テクスチャー変化の比較に利用できることが示唆された.以上から,FTIRイメージング法が穀類粉生地の付着性評価に活用できる可能性を認めた.

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