日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第71回 (2024)
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[2Bp] フレーバー物質,色素
特定名称酒の香気成分のSA-SBSE-GC/MSによるターゲット分析
*山崎 裕也笹木 哲也落合 伸夫笹本 喜久男道畠 俊英小栁 喬
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p. 41-

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抄録

【目的】

特定名称酒は,原料や製法などの基準を満たした清酒であり, 吟醸酒,純米酒, 本醸造酒の3タイプに分類される. 吟醸酒はフルーティな風味, 純米酒は豊かな風味とコク, 本醸造酒は淡麗でスッキリした風味が特徴であるとされている. 本研究では, 極性成分の高感度分析を可能とするsolvent-assisted stir bar sorptive extraction (SA-SBSE)-ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を活用し, 特定名称酒3タイプの香気特性を明らかにすることを目的とした.

【方法】

吟醸酒10品, 純米酒10品, 本醸造酒7品の合計27品を供試試料とした. アルコール度数7.5%(v/v)に希釈した清酒試料5 mlにNaCl 1.5 gを加え, SA-SBSE法により香気成分をPDMS被覆攪拌子に吸着させた. アセトン逆抽出液100 μlを大量注入してGC/MSにより分析した. 先行研究でGC-Olfactometryにより嗅ぎ取れた45成分をターゲット成分として, 各ピークの面積を用いた判別分析とヒートマップ解析を行った. さらに, 一部の試料について, 標準添加法による定量分析を行った.

【結果】

特定名称酒3タイプの判別分析およびヒートマップ解析の結果から, 吟醸酒にはカプロン酸エチルが多く含まれており, フルーティな特徴を反映していた. また, 本醸造酒に特徴的な香気成分は少なく, シンプルで淡麗な特徴を反映していた. 純米酒に特徴的な香気成分の種類は多く, 特に極性香気成分が多かった. 3タイプの相対濃度を箱ひげ図で比較した結果, 純米酒にはバニリン, γ-6-(Z)-ドデセノラクトン, 4-メチル-5,6-ジヒドロピラン-2-オン, ベンズアルデヒド, ロイシン酸エチルなどの極性成分が多く含まれていることが明らかとなった. 豊かな風味とコクを持つ純米酒の酒質には, これらの極性成分が重要な役割を果たしているものと考えられる.

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