主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】ワインにおけるpHは,酸味や色調,微生物安定性などに関わる重要な要素である.一般に,酸が増加するとpHは低下するため,pHと滴定酸度(TA)は負の相関を示す.しかし,酸の組成やミネラル濃度もpHに影響を及ぼすため,pHの決定要因やその寄与度はワインの種類によって異なると考えられる.ワインは産地区分や品種区分などで分けられるが,pHの決定要因とその寄与度が区分によって異なるかは十分に検証されていない.そこで本研究では,日本ワインと輸入ワインを用い,産地区分および品種区分の違いによるpH決定要因とその寄与度を明らかにすることを目的とした.【方法】本研究では,87本のワインを試料とし,輸入シャルドネ(I-CHD)20 本,日本シャルドネ(D-CHD)42本,日本甲州(KOS)25本に区分した.各ワインについて,pHメーターでpH,自動滴定装置でTA,HPLCで有機酸濃度(クエン酸,酒石酸,リンゴ酸,コハク酸,乳酸,酢酸),原子吸光光度計でミネラル濃度(K,Na)を測定した.各成分の濃度は,プロトンの当量濃度に換算して解析に用いた.統計解析にはJMP17を使用し,相関分析と偏相関分析を実施した.【結果】ワイン87本のpHとTAの相関係数は−0.159であり負の関係はあるものの低い相関値となった.そこで,I-CHD,D-CHD,KOSごとのpHとTAの相関をみたところ,それぞれ0.254,−0.507,−0.587であった.つまりpHにはTA以外の要因が影響していることと,その寄与度は区分により異なることが示唆された.そこで,有機酸とK,Na濃度の影響を除いた予測pHおよび予測TAの値を算出し,偏相関係数を算出した.その結果,I-CHDの相関係数0.254は,総有機酸,K,酒石酸濃度の影響を除いた場合,偏相関係数がそれぞれ−0.441,−0.276,−0.229へと相関の方向が逆転した.すなわち,相関構造にこれら要因が強く影響していた.さらに,相関係数と偏相関係数の変動度は,D-CHDよりもI-CHDが大きく,pH決定要因とその寄与度が区分により異なることが示唆された.