主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
p. 27-
【講演者の紹介】
佐合 徹(さごう とおる)
略歴:2002年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了,同年明治乳業株式会社(現:(株)明治)食品開発研究所勤務,2008年三重県入庁,2010年より現職.三重県工業研究所 食と医薬品研究課 主幹研究員兼課長代理.主に,食品加工に関する研究に従事.
ファインバブルとは,液体の中に100マイクロメートル未満の径で存在する気泡群である.そのうち,1マイクロメートル未満のものをウルトラファインバブル,1以上100マイクロメートル未満のものをマイクロバブルと区別している.ファインバブルは,泡表面がマイナスに帯電していること,数か月に渡って水中で残存できることおよび泡の中に空気だけでなく不活性ガスなど様々な気体を含むことができることが特徴である.
食品分野では,ファインバブルを用いることで,酸化防止,物性改良,保存性向上,分散安定性向上,抽出効率増加,劣化臭の低減,香りの付与,風味改善,殺菌効果増大が期待できる.また,乳化剤,安定剤といった食品添加物の使用量を低減すること,品質の保持期間が延長されること等により,SDGsに向けたものづくり,カーボンニュートラル社会に貢献する可能性がある.そこで本研究では,ファインバブル技術をアイスクリーム等の加工食品へ利用することを検討した.
試料として,高脂肪のアイスクリームミックスを用いた.動的粘弾性解析装置を利用し,少量でのプロセス評価を行った.蒸留水を用いた時と比べて,窒素ウルトラファインバブル水を用いた時は,粘度の上昇開始時間が遅く,凍結温度となる-9.8 ℃を境にして温度が上昇する時間も遅いことが分かった.さらに,脂肪凝集率や官能評価を行った.アイスクリーム製造時に,ウルトラファインバブル水を用いて製造中の粘度変化を抑制し,脂肪凝集率を低下させ,アイスクリームの後味が残らないことを確認した.一方で,アイスクリームミックスをファインバブル処理することで,アイスクリームの品質に影響を与える脂肪凝集率が,フリージングせず10 %増加させることができた.粘度上昇や脂肪凝集率の増加を確認し,ファインバブル技術により,アイスクリームの物性や風味を制御する方法を確立した.
また,大豆飲料の製造時,ウルトラファインバブル水を利用すると,未処理品に比べて粘度が低下した.大豆飲料の青臭さの原因物質の一つとされるヘキサナールの濃度を比較したところ,未処理品に比べて低かった.豆腐にした時の硬さが低下した.一方で,大豆飲料をファインバブル処理すると,粘度低下と飲みやすさが向上した.本技術により製造された,大豆飲料は,食品添加物を用いず,飲みやすく,大豆の劣化臭が抑制されている.
さらに,窒素ファインバブル処理したミカン果汁は,4週間後の果肉等の沈殿が少なく,分散性が良いことを確認した.ウルトラファインバブル水で希釈したレモン果汁は保存後の色彩変化が抑制できることを確認し,食用油脂をファインバブル処理すると,酸化劣化を抑制することを確認した.ウルトラファインバブル水を用いて緑茶の抽出を行うと,色の違いや成分の濃度に変化がみられることが分かった.
これらの技術は,SDGs,カーボンニュートラルおよびフードテックに大きく関与しており,これからも製品・技術開発等を実施していく必要があると考え,引き続き取り組んでいきたい.