日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
セッションID: 3Ma05
会議情報

[3Ma01-10] 発酵,酵素利用
酸化還元酵素処理による鶏胸筋肉タンパク質の架橋重合と物性変化
*上島 広幹小池 穂菜美時下 進一熊澤 義之
著者情報
会議録・要旨集 オープンアクセス

詳細
抄録

【目的】 タンパク質の架橋高分子化は、食品物性に影響を与える要因の一つと考えられる。代表的な酵素として、トランスグルタミナーゼ(TG)が知られているが、TGとは異なる機構で架橋を形成する酵素として、酸化還元酵素(ラッカーゼ、以下Lac)に着目し、筋肉タンパク質を対象に架橋条件や架橋構造物、物性への影響について検討を試みた。

【方法】 酵素は、Myceliophthora由来Lac(Sigma-Aldrich製)を用いた。筋原線維(以下Mf、0.1M NaCl)及びアクトミオシン(以下AM、0.3M NaCl)は、市販の鶏胸肉を用いて調製し、基質とした。反応メディエーター(低分子フェノール)として、フェルラ酸(FA)を用いた。基質(15mg/mL)に対して、種々の反応温度(~60℃)、反応時間(~4時間)、FA濃度(~10mM)、酵素:基質(1:125)にてLacとの反応後、電気泳動(還元、非還元)により、タンパク質成分組成の変化、遊離アミノ基(TNBS法)、SH基(DTNB法)の定量、抗ジチロシン抗体を用いたウエスタンブロッティングによる架橋構造物の検出を行った。物性評価は、鶏肉ソーセージを調製(酵素量対肉1/40,000)し、クリープメーター(山電)により評価を行った(φ5mmプランジャー、テクスチャー解析モード)。また、サンプルをSDS尿素混液で溶解させ、電気泳動によりタンパク質成分組成の変化を観察した。

【結果と考察】 ① Lac処理によるタンパク質組成の変化は、MfとAMでは同様な傾向を示し、FA存在下でミオシン重鎖(MHC)モノマーの減少が他のタンパク質に比べて顕著に認められ、MHCが架橋高分子化していると考えられた。この現象は、FA濃度、反応時間、温度依存的に顕著に起こり、60℃ではアクチンの減少やFA非存在下でもMHCの減少が観察されるようになった。また、非還元下での電気泳動の結果、MHCの重合にはSS結合の関与が考えられた。 ② Mf、AMともに、Lac反応により遊離アミノ基の減少と遊離SH基の減少が認められ、重合にリジンやシステインの関与が考えられた。 ③ ウエスタンブロットでは、Lac処理により、高分子域に幅広くジチロシンが検出され、反応の進行に伴って分子間架橋が形成されることが示唆された。 ④ソーセージでの評価では、Lac添加により破断応力の低下及び破断凹みの増加が認められた。この際、電気泳動(還元下)上ではLacの添加有無には著差は認められなかった。以上より、LacによりMHCは反応の進行度合いに伴って分子間架橋による重合物を形成し、高分子化したタンパク質は鶏肉の物性に影響を与えることが考えられた。

著者関連情報
© 2025 公益社団法人 日本食品科学工学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top