【目的】 卵白は加熱凝固性や保水性などの性質から様々な加工食品の物性(食感)改質に利用されている重要なタンパク質素材である。卵白を物理化学的に処理することにより、凝固性等の特性改質が可能であることが知られている.本研究では、酵素的処理としてラッカーゼを用いて、卵白を処理した際のタンパク質成分や物性変化を検討することを目的とした.【方法】 酵素は、Myceliophthora由来ラッカーゼ(Sigma-Aldrich製、以下Lac)を用いた.卵白は、乾燥卵白(キューピー製)、 反応メディエーター(低分子フェノール)として、フェルラ酸(FA)を用いた.卵白溶液(60mg/mL, pH7)に対して、種々の反応時間(~24時間)、FA濃度(~10mM)、酵素/基質(~1/50)にてLacとの反応後、加熱ゲルを調製した.得られたゲルの①物性(クリープメーター、山電、φ3mmプランジャー、テクスチャー解析モード)、②離水率、③SDS-尿素混液による可溶化物のSDS-電気泳動パターンの評価を行った。また、抗ジチロシン抗体を用いたウエスタンブロットによる④架橋構造物の観察を行った。 【結果と考察】 ① 加熱ゲルのかたさは、反応時間に伴って増加した(最大約3倍)が、反応4時間以降では減少する傾向が認められた.また、酵素添加量及びFA濃度依存的にかたさの増加も認められた.② 反応時間及び酵素添加量は離水率に大きな影響は認められなかったが、FA存在下では離水率の減少が認められた.③ 還元下でのSDS-電気泳動では、オボトランスフェリン(OT)のバンドは反応依存的に減少が認められ、高分子域にスメアな染色域とゲル上端部に新たなバンドが認められた.一方、オボアルブミン(OV)及びリゾチーム(LY)では、明瞭なバンドの減少は認められなかった.非還元下では、反応1時間からほぼすべてのバンドが認められなくなり、酵素反応に伴ったジスルフィド結合による高分子化が示唆された.④ ウエスタンブロットの結果、反応初期では,高分子域にブロードなジチロシンによる染色が観察されたが、反応の進行に伴って染色量は減少した.この際、ゲル上端部にも染色が確認された.また、OVAの位置にも染色が認められ、分子内架橋が示唆された.これらのことから,ラッカーゼ反応により、ジスルフィド結合やジチロシンを含む架橋構造が形成され、高分子化が進み、ゲル物性の増加を起こすことが考えられた.