主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】塩こうじは米麹,塩,水を用いた日本の伝統的発酵調味料である.従来のペースト状の製品は計量・混合の難しさ,粒残り,焦げ付き等の課題があった.これに対し特許製法により開発された『液体塩こうじ』は,計量性,混合性及び浸透性を向上させ,焦げ付きや麹臭を抑制し,用途を拡大している.液体塩こうじは,うま味増強,上品な甘味,まろやかな塩味を持つ.この複雑な風味や肉の軟化効果は,発酵代謝物や麹由来酵素によると考えられるが,その寄与成分は未解明である.本研究では,液体塩こうじの含有成分を分析し,特性に関与する成分を推定することを目的とした. 【方法】各種成分分析,GC-MS及びメタボローム解析(CE-TOF-MS)により低分子代謝産物を,LC-MS/MSを用いてタンパク質の分析を試みた.加えて,軟化効果に寄与するタンパク質は精製・同定を進めた. 【結果】アミノ酸ではグルタミン酸,次いでロイシン,アルギニンが多く,有機酸ではクエン酸,還元糖ではブドウ糖を主としてイソマルトースも多く含まれていた.GC-MSではBenzaldehydeや2-3-Butanediolなどが主な成分として検出された.メタボローム解析ではイオン性代謝物質として301のピークを見出し,ライブラリーとの照合により126ピークが同定できた.非タンパク質性アミノ酸やビタミン類,ペプチドも多く含まれ,これらの成分が複合的に風味に関与していると考えられた.一方,タンパク質の分析においては,主要な酵素としてアスパラギン酸プロテアーゼ,グリコシダーゼの配列が検出されたが,麹菌由来の機能未知のタンパク質配列も確認できた.液体塩こうじの肉の軟化効果は糖類によるタンパク質との結合や食塩による保水・タンパク質の可溶化等も影響を及ぼすが,SDS-PAGEではウシ筋原繊維タンパク質の分解も見られることから,プロテアーゼも関与すると考えられる.そこで,液体塩こうじ中のプロテアーゼの精製を進めた結果,アスパラギン酸プロテアーゼであるAspergillopepsin Iを推定した.