主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
【目的】 細菌が抗生物質や環境ストレスにさらされると, 菌集団の大部分を占める正 常な菌体は死滅するが,一部の Persister 集団は生き残る.環境ストレスが取り除かれ ると Persister は再び増殖を再開する.これまでに,有機酸による Persister の制御とい う報告はほとんどない.そこで本研究では,有機酸を用いた Persister の制御の可能性 を検討した. 【方法】本研究では,Escherichia coli(VTEC)O157:H7, Salmonella Typhimurium NBRC12529 を対象とした. まず, 高濃度の抗生物質処理によって菌集団から Persister 集団のみを単離した.抗生物質は,シプロフロキサシン(DNA 複製阻害剤) ,アンピ シリン(細胞壁合成阻害剤) ,カナマイシン(タンパク質合成阻害剤)を用いた.次 に,有機酸(酢酸,リンゴ酸,プロパントリカルボン酸)を用いて,それぞれの抗生 物質処理によって単離された Persister に対する殺菌効果を pH 調整した環境下で調べ た. 【結果】pH 3 において 180 mM の酢酸処理により, VTEC においては 4 時間後ま でに生菌数が 2~3 log 低下し, Salmonella においては, 15 分後までに検出限界以下ま で低下した.同様にリンゴ酸も Persister の殺菌制御に非常に有効であることが明らか となった. これらの結果より, Persister の制御において,有機酸が有力な候補となり得ることが 示された.現在, 有機酸処理前後の菌体内の ATP 量を測定することで,その作用メカ ニズムの解明を行っている. また, 有機酸を利用して食品ならびに製造機器表面など 様々な環境において, 酢酸,リンゴ酸以外の有機酸の効果についても検討する予定で ある.