主催: 公益社団法人 日本食品科学工学会
会議名: 日本食品科学工学会第72回大会
回次: 72
開催地: 日本大学生物資源科学部 湘南キャンパス
開催日: 2025/08/27 - 2025/08/29
p. 36-
【講演者の紹介】
氏名(ふりがな):津田 真人(つだ まさと)
略歴:2003年 日本大学生物資源科学部食品科学工学科卒業,2005年 日本大学生物資源科学研究科生物資源利用科学専攻博士前期課程修了,2008年同博士後期課程修了,2010年 米国Cedars-sinai Medical Centerにて博士研究員,2015年 日本大学生物資源科学部食品生命学科 助教,2018年より専任講師,2023年より食品生命学科 准教授(現職).
近年,「免疫機能の維持に役立つ」ことをヘルスクレームとした機能性表示食品が登場し,消費者の食品を介した免疫機能の維持・増進に対する意識や関心が高まっている.難消化性オリゴ糖や食物繊維などのプレバイオティクスは,ヒトの消化酵素で消化されず,腸内環境の変化を介して,宿主の健康増進に有益な効果を発揮する食品成分である.特に,感染防御増強作用や抗アレルギー作用などの免疫調節作用も期待され,様々な研究が進められている.プレバイオティクスによる免疫調節作用の機序を考慮すると,腸内細菌の多くが存在する大腸部位で主な作用を発揮することが推察される.しかしながら,免疫指標については全身免疫系やパイエル板などの小腸の免疫組織を標的とした解析が主流であるため,プレバイオティクスによる免疫調節の起点になると考えられる大腸の免疫系への影響を明らかにすることが重要であると考えられる.
そこで,我々は大腸の免疫系について,特に,免疫誘導組織である腸管関連リンパ組織の抗体産生能に着目した研究を進めてきた.小腸のパイエル板はIgA抗体の主要な誘導組織であることがよく知られているのに対し,BALB/cマウスの盲腸粘膜に存在するCecal patches (CeP)では,IgAとは異なるIgG2bアイソタイプの抗体を発現するB細胞が豊富に存在していることを見出した.無菌マウスや抗生物質を投与して腸内細菌叢を制限したマウスを用いた解析から,CePのIgG2b陽性B細胞の誘導には腸内細菌叢の存在が必要であることや,CeP由来B細胞が産生するIgG2b抗体は腸内細菌に高い結合性を示すことも明らかにしている(Tsuda et al., J Immunol Res,2022,Okada et al. Biosci Microbiota Food Health. 2025).近年,健常なヒトやマウスの血液中に腸内細菌反応性IgG抗体が存在し,全身性細菌感染に対する防御反応にはたらくことが報告されていることから,CePがその供給の一端を担う可能性を推察している.
食品成分により上述のような大腸免疫系を介した抗体産生応答を調節できるか?についても検討を進めている.代表的なプレバイオティクスであるフラクトオリゴ糖(FOS)を含む飼料をマウスに摂取させたところ,腸管や血液中のIgAやIgG2b抗体量が増加すること,CeP内の抗体産生に関わる細胞応答を促進することも示されている.現在,FOSによる抗体産生応答の促進に寄与する腸内細菌叢の変化やその腸内細菌による免疫調節作用について解析を進めている.