日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
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シンポジウムB3: 『食』と『健康』のフードサイエンス最前線
黒大豆種皮ポリフェノールが脳機能にもたらす影響
*山下 陽子
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p. 37-

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抄録

【講演者の紹介】

山下 陽子(やました ようこ):神戸大学大学院農学研究科准教授(管理栄養士)

略歴:2005年神戸女子大学家政学部管理栄養士養成課程卒業, 2007年神戸女子大学大学院家政学研究科博士前期課程修了,2007年4月〜2009年8月神戸女子大学家政学部管理栄養士養成課程助手,2009年9月〜2010年3月神戸大学教育研究補佐員, 2013年神戸大学大学院農学研究科博士課程後期課程修了, 2013年〜2019年神戸大学大学院農学研究科特命助教, 2019年~現職

黒大豆は日本で古くから食されてきた食品であり,黄大豆と比較して種皮に多くのポリフェノールが含まれていることが特徴である.黒大豆種皮中には,アントシアン類やフラバン-3-オール類が主要な化合物として構成されている.これらの化合物が存在することで,種皮が黒色を呈している.私たちの研究室では,これまでに黒大豆種皮ポリフェノールの持つ様々な機能性について明らかにしてきた.本シンポジウムでは,その成果の一部である脳機能を介した健康効果とそのメカニズムについて紹介させていただく.黒大豆種皮ポリフェノールのうちフラバン-3-オール類は,ほとんど小腸から吸収されないが,小腸に存在するL細胞に作用して,インクレチンホルモンであるglucagon like peptide-1(GLP-1)の分泌を促進することを明らかにした.この効果は,フラバン-3-オール類のうち,4量体であるシンナムタンニンA2で高かった.また,黒大豆種皮ポリフェノールは,GLP-1分泌を促進することで,迷走神経求心路を介して脳に刺激を伝達し,食欲の低下やエネルギー代謝を促進して肥満や高血糖予防効果を発揮していることが明らかになった1,2).一方で,黒大豆種皮に含まれるアントシアン類のシアニジン3-グルコシドは,高脂肪食摂取によって誘導される, 脳のミクログリア活性化による炎症症状と食リズムの乱れ(休眠期の摂食行動)を是正し,これが肥満の予防に寄与していることが判った3).また,その活性本体は,アントシアン類のシアニジン3-グルコシドとその代謝産物であるプロトカテク酸であることが明らかになった.プロトカテク酸は,脳の視床下部に到達し,細胞内に取り込まれた後,IKKβのKinase活性を阻害することで,NF-kBの活性を介した炎症を抑制していた.さらに,黒大豆種皮ポリフェノールを66週間摂取させると,加齢による認知機能の低下を抑制した.これに関しても,脳の海馬におけるミクログリア細胞の活性化予防を介した炎症抑制が,タウタンパク質とアミロイドβの蓄積予防に関与していた.以上のことから,黒大豆種皮ポリフェノールは様々な経路を介して,脳機能に作用することで,健康維持増進に寄与する食品成分であることが判った.

1) Yamashita Y.al., Cinnamtannin A2, a Tetrameric Procyanidin, Increases GLP-1 and Insulin Secretion in Mice. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 77(4), 888–891,2013.

2) Yamashita Y., Physiological functions of poorly absorbed polyphenols via the glucagon-like peptide 1. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 88(5),493-496, 2024.

3) Hironao K.al., Black soybean seed coat polyphenol ameliorates the abnormal feeding pattern induced by high-fat diet consumption. Front Nutr. 9,1006132, 2022.

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