【目的】 持続可能な食糧供給システムの構築に向け、動物性原料を用いない代替食品の需要が拡大している。大豆タンパク質の酵素加水分解物(SPHs)を原料としたメイラード反応物(MRPs)は肉様香気を呈するため、代替肉の風味を向上できる可能性がある。これまでに我々は、SPHs調製における酵素反応条件がMRPsの香気成分組成に影響することを見出した[1]。本研究では、異なる条件で調製されたMRPsの香気を官能評価で比較し、肉様香気成分の同定ならびに当該成分が産生される条件の解明を目指した。
【方法】 分離大豆タンパク質にフレーバザイムを作用させ、調製条件が異なる2種のSPHs を調製した。これらにシステインとリボースを添加し加熱することで2種のMRPs(MRPsA、MRPsB)を調製した。また、比較対象として、牛肉抽出液とコンソメ抽出液を調製した。官能評価では、所内の12名をパネリストとし、「全体的なにおい」「動物系のだしのにおい」「米・もち米のにおい」「酸っぱいにおい」の4項目について採点した。さらにGC/MS(SPME法)により各試料の香気成分を比較した。
【結果】 官能評価:「全体的なにおい」と「動物系のだしのにおい」はMRPsB、コンソメ抽出液で、「米・もち米のにおい」はMRPsA、MRPsB、牛肉抽出液でそれぞれ有意に強いと評価された。このことから、MRPsBは牛肉抽出液以上に肉様香気が強く、代替肉の風味を向上できる可能性が示された。GC/MS分析:標品との比較によりMRPsBの肉様香気成分は2-メチル-3-フランチオール(豚肉臭、ビタミン臭)と推定された。現在、2種のMRPs間で香気に差が生じた原因を調査している。
[1] Nishimura & Abe (2025), Food Chem., 464, 141599.