日本食品科学工学会大会講演要旨集
Online ISSN : 2759-3843
第72回 (2025)
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特別講演
[特別講演]食品とその生理機能をつなぐScience
*関 泰一郎
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抄録

【講演者の紹介】氏 名:関 泰一郎(せき たいいちろう): 日本大学 生物資源科学部 バイオサイエンス学科・教授略 歴:昭和61年3月日本大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士前期課程修了,平成4年博士(農学)・東京大学,平成6年-8年 米国ミシガン大学医学部人類遺伝学科博士研究員,平成8年日本大学生物資源科学部専任講師,平成19年同准教授,平成23年同教授. 平成29年 公益社団法人 日本栄養・食糧学会賞受賞.

 食品の三次機能(生体調節機能)という概念が提唱されて以来, 食品は単なる栄養の供給源としてのみならず, 健康増進・疾病予防に資するものとして捉えられるようになった. 1980年代までの食品研究は, 栄養特性(一次機能)や加工・貯蔵中の成分変化に関するものが主流であった. そのような流れの中で, カゼインの消化酵素分解物中にモルヒネ様ペプチド(opioid peptide)が発見され, また, 香辛料の辛味成分カプサイシンによるエネルギー代謝亢進作用が示されるなど, 食品は生体機能を潜在的または積極的に制御する可能性が示唆された. 1997年の「生活習慣病」概念導入を契機に, 三次機能に対する関心が高まり, 健康意識の向上, 平均寿命の延伸により疾病構造も変化した. 平均寿命の延伸とともに, 食品に求められる機能性は, がん, メタボリックシンドローム, 循環器疾患に対するものから, 認知機能, 運動器機能, フレイル予防などをターゲットとするものへと拡大している.さらに研究手法においては, 質量分析やオミクス解析, イメージング技術の進歩により, 微量成分の可視化や機能性成分の作用機序の解明が飛躍的に進展した. 一方, ヒト介入試験によるエビデンスの取得においては, 遺伝的背景, 腸内細菌叢, ライフスタイルなどに起因する個人差を考慮した研究の重要性が高まり, 腸内環境とエピジェネティクスの統合や個別化栄養(precision nutrition)の概念も提唱されている. また, 消費者への科学的根拠の提供など, 情報発信のあり方も問われている.

 本講演では, 講演者らが取り組んできた香辛料成分の機能性, 特にガーリック由来の硫黄化合物による細胞骨格の修飾を介した抗がん作用メカニズム1-3), 薬物代謝系酵素の制御を介した生体防御と発がん予防の可能性4,5), マイクロRNA発現を介した脂質代謝の制御と抗肥満作用6), さらに血液凝固・線溶系因子に関する基礎研究7-9), 及び食品成分が血管内皮機能に及ぼす影響, 抗動脈硬化作用について紹介する10). また, これらの基礎研究が細胞から個体レベル, さらには臨床的意義へとどのように展開されたかを振り返りつつ, 食品とその生理機能をつなぐ科学の変遷, そして研究を取り巻く社会的背景や次世代研究者・学生の意識の変化についても考察する.

1) Seki T, Ariga T et al., Cancer Lett. 2000; 160: 29-35.

2) Hosono T, Seki T et al., J Biol Chem. 2005;280:41487-93.

3) Hosono T, Seki T et al., Carcinogenesis. 2008; 29:1400-6.

4) Fukao T, Hosono T, Seki T et al., Food Chem Toxicol. 2004; 42: 743-9.

5) Hosono-Fukao T, Seki T et al., J Nutr. 2009;139(12):2252-6.

6) Miura A, Hosono T, Seki T et al., Mol Nutr Food Res. 2021; 65 :e2001199.

7) Seki T, Ariga T et al., J Cell Physiol.2001;189:72-8.

8) Okumura N, Seki T et al., J Biol Chem.2009; 284: 16553-61.

9) Hosono T, Seki T et al., J Agric Food Chem. 2020;68:1571-8.

10) Okue S, Hosono T, Seki T et al., Food Funct. 2022,13,1246-55.

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