抄録
負電荷をもつL‐グルタミン酸残基と正電荷をもつL‐リシン残基を,それぞれ適当量含有するN‐ヒドロキシアルキル‐L‐グルタミンとの三元ランダム共重合体ヒドロキシ膜を調製し,膜中における分子鎖コンホメーション,側鎖末端部分での疎水性および電荷が,膜の水膨潤度や膨潤時力学特性あるいはプロテアーゼ酵素による膜の酵素分解挙動などの膜性能に及ぼす効果を検討した。膜の水膨潤度はFlory近似式で表され架橋度に依存すること,分子鎖に電荷が単独導入されると膨潤度が増加するが,両性電解質系では非電荷型と同様の傾向を示すこと,膜の力学性能は分子鎖コンホメーション,側鎖末端部分での疎水性,および水膨潤度に大きく依存し,両性電解質系では正負電荷同士の静電相互作用により力学性能が増大することが示唆された。同様の傾向が,ブロメライン酵素による加水分解速度にも示された。両性電解質系ヒドロゲル膜は,より生体軟組織に類似した力学性能が期待でき,酵素加水分解速度の調整も可能であり,最適の性能を付与したヒドロゲル膜の分子設計に大きな期待がもたれる結果が得られた。