抄録
パルス法NMRにより多成分系の粘着剤を定量的に分離することが可能なことから,粘着剤の相構造と粘着特性の研究についても測定・解析が行われている。測定結果の巨視的磁化M(t)は非常に情報量の多いデータであるが,従来のデータ処理法に問題があり,十分にその情報を生かしきれていなかった。パソコンの性能向上と数値処理アルゴリズムの発展により,巨視的磁化M(t)を直接数値微分することにより緩和スペクトルを求めるプログラムを作成することができた。この緩和スペクトルは従来のT2緩和時間に比べ得られる情報量が圧倒的に多い。本プログラムを用いSIS/タッキファイヤ系粘着剤の緩和スペクトルを求めた。この緩和スペクトルでポリマーとタッキファイヤの相互作用の解明が可能となり,粘着剤設計の指針となりえることが明らかとなった。本緩和スペクトルによる粘着剤の解析方法は,粘着剤分子設計,配合設計の非常に有効な評価手段となるものである。