2023 年 59 巻 3 号 p. 73-80
オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂は,熱安定性が高く構造用途での利用が期待されている。構造用接着剤では長期信頼性・損傷許容設計の観点から,疲労き裂進展抵抗の評価が重要となる。本論文では,オキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂の導入が接着疲労き裂進展抵抗に及ぼす影響ついて検討を行った。エポキシ主剤として,ビスフェノールA 型エポキシ,オキサゾリドン環型エポキシを混合して用いた。き裂を接着層へ誘導する犠牲粒子としてグラフェン積層体,強靭化粒子として,ポリアミド粒子,コアシェルゴムを用いた。接着疲労試験は,TDCB 試験片を用いて行った。グラフェン積層体の添加量が0.16wt%のときもっとも高いき裂進展抵抗を示した。オキサゾリドン環型エポキシを20wt%含んだエポキシ接着剤は,同じガラス転移温度を有するビスフェノールA 型接着剤よりもき裂進展抵抗が高く,同じ架橋点間分子量を有するビスフェノールA 型接着剤と同等のき裂進展抵抗を示した。これは添加材を含まない樹脂単体の疲労き裂進展抵抗と同じ傾向であり,接着層内破壊を示す場合には疲労き裂進展抵抗は樹脂の特性に強く依存することを明らかにした。オキサゾリドン環をネットワークに組み込むことにより,接着剤の耐疲労性向上と高耐熱性の両立を達成した。