2023 年 59 巻 9 号 p. 310-317
水中での接着は,接着界面に存在する水分子の影響で困難なことが多い。しかし,自然界にはフジツボのように水中で接着し生きている種や,タコやイカなどのように吸盤を用いて強固かつ素早く吸脱着可能な水性生物も多数存在している。我々はそのような生物のなかでも,水中で可逆的かつ素早く吸脱着可能なウバウオの吸盤表面の階層的な微細構造の機能について,人工的に模倣材料を作製することで材料科学的に解明することを目的とした。模倣材料の作製と接着力測定の結果,粘液の代わりに用いた柔らかいPDMS の中に存在している硬い高分子の繊維状構造体が接着力を増強していることが確認され,柔らかさによる接触面積増加と硬さによる脱着時の変形応力分散が強い接着力を生み出していることが明らかとなった。さらに大気下および水中でも接着力が変化しないことから,多様な環境で応用可能な接着材料開発の指針を得ることができた。