2018 年 42 巻 1 号 p. 69-79
本研究は、イギリス国内で市が全面的に関与する初めての事例となったシェフィールド市における盲児のインテグレーションの実態と、その成立条件を明らかにすることを目的とした。シェフィールド市は、従来より、障害児の教育の場をめぐっては柔軟な考えを有していたが、盲児のインテグレーションの考案から実働まで中心的役割を担った盲学校校長トゥーズや支援員ウィテカーなどのカリスマの出現は必要条件であった。また同実践が一部の関係者のみならず、地域住民や行政を巻き込んだ一大プロジェクトとなった一つには、1960年代に教育的・社会的趨勢となっていた中等学校改革と連動していたことも挙げられる。同実践は教育そして社会全般の改革を意図した大きな動きの中で実施されたのであった。