2016 年 17 巻 1 号 p. 1-7
本研究では,「香り文化」を,「主に快適性の増進を目的とした,室内における香りの活用全般に関する文化」と定義し,日本の近代社会の経済状況や生活環境の変化のなかで「香り文化」がたどった変遷を探り,日本の社会におけるアロマテラピーの受容と展開にどのような背景があったのかを明らかにした。この第1報では,主に衛生,公害,家電,住宅,下水道などの制度的な面に着目し,明治期から1980年代前半までの「香り文化」の変遷について調査,分析を行った。また香りに関連した商品の例証を行い,それらが保健環境や居住環境,近代批判としての自然志向の風潮など社会的要素から影響を受けていることを示した。