2025 年 26 巻 1 号 p. 31-41
精油の香りが,テレワーク就業者の気分,睡眠の質,認知機能,仕事のパフォーマンスに及ぼす影響を検討するため3つの実験を実施した。実験1:精油を4週間使用した前後の,心理,睡眠,認知機能,仕事パフォーマンスへの変化を,STAI,POMS®2,アテネ不眠尺度,オンライン認知検査,SPQ東大1項目版により検討した。実験2:精油を使用する直前と10分後の気分変化について,二次元気分尺度により検討した。実験3:3日間の精油使用における睡眠構造および主観的熟睡感の変化について,Fitbit Charge3および起床後熟睡感により検討した。対象者は25~49歳の男女30名であった。精油は,日中はローズマリー・シネオールまたはオレンジスイート,夜間は真正ラベンダーまたはベルガモットから,実施時ごとの嗜好に基づき選択して使用し,対照として精製水を用いた。精油の香りによる芳香浴を4週間実施した結果,SPQ東大1項目版によるプレゼンティーイズムの値は低下し,精製水における変化量と有意差が認められた(p<0.05)。また,芳香浴開始10分後に,二次元気分尺度(TDMS-ST)の活性度,安定度,快適度の値がいずれも有意に上昇した(p<0.05)。本研究の結果,精油の香りがテレワーク就業者の仕事パフォーマンスや気分に有用な可能性が示唆された。