抄録
<要旨>
本稿は、パキスタンにおいて法的に認定された「第三の性」「ハワージャ・サラー( Khawaja Sara )」が、いかにして制度的命名と宗教的・文化的象徴の交差点において再構築され、定着してきたのかを明らかにするものである。筆者は2011年以降、パキスタン各地で長期的なフィールドワークを行い、ハワージャ・サラーと呼ばれる人々の生活、宗教実践、法的アイデンティティ形成の過程を参与観察とインタビューを通じて記録した。分析は宗教的象徴、歴史的語彙、法制度の三つの視点から構成され、特に2009年以降の最高裁判決による「ハワージャ・サラー」という名称の導入とその正統化のプロセスに焦点を当てた。本稿は、ハワージャ・サラーというジェンダー名が単なる呼称ではなく、翻訳、包摂、管理という政治的力学の中で構築された制度的構成物であることを示すとともに、ジェンダーの植民地性、身体性、自己命名の可能性についての理論的考察を行う。