抄録
高温工学試験研究炉(HTTR)の原子炉出力30MWまでの高温試験運転で得た測定データを元に、燃料からの核分裂生成物放出挙動を検討した。1次冷却材放射能計装による1次冷却材放射能濃度は検出限界(14MBq/m3)以下であった。燃料破損検出装置(FFD)の計数率は原子炉出力と共に上昇し、出力60%付近から上の出力で定格運転時よりも高くなった。1次冷却材中希ガス放射能濃度測定では、定格運転時と同様にKrは3核種、Xeは4核種が検出され、出力100%における88Krの放出率は、定格運転時の約7×10-9より高い約1×10-8となった。これは、運転上の制限値である燃料破損1%での希ガス放出率(5.35×10-4)より3桁以上低く、安全上は全く問題がないことが確認できた。希ガス放出モデルによる事前評価の結果、予想通り、燃料温度が高い出力において希ガスの拡散放出挙動により放出率は上昇した。