抄録
我々は過去3年間にわたり、日本型合意形成モデルの構築における情報提供のあり方について検討を行ってきた。その結果、情報の効果的な提供に寄与しうるリスク因子の存在は明らかにならず、むしろ情報内容及び提供対象を考慮して実施することが重要であるとの結果を得た。東日本大震災と津波によって引き起こされた原子力発電プラントからの放射能漏洩による様々な混乱は、この情報提供の具体的なあり方について多くの示唆をもたらした。即ち、国の対策の根拠となる科学的情報の提供に止まらず、対策の元となるIAEAの考え方、さらにその根拠となるICRPが勧告する数値、そしてICRPが準拠するUNSCEARの科学的附属書にまで遡り、その正当性を検証しようとする動きがみられている。このような状況下において必要なのは、情報の提供にとどまらず、入手した情報を利用してどのように考える事が安全・安心に関する人々の理解につながっていくのか、という点にあると考えられる。