抄録
中性子照射による金属材料の損傷の解明については、特別な施設と技術を要する中性子照射による試験に替わる方法として、加速器等を用いたイオン照射によって中性子照射を模擬する試験が行われている。ここでは、軽水炉の炉心構造材料の照射損傷と、実験に用いた200keVのイオン注入装置の条件で、プロトンと中性子による結晶中の鉄原子のはじき出し過程を比較した。鉄原子が受け取るエネルギーの相違によって、はじき出しの発生分布が大きく異なり、dpa値で整理されている同一の照射量では、プロトンの場合、中性子と比較して2倍程度以上の損傷を発生させるとの評価を得た。