抄録
粥状硬化性動脈硬化症は高齢化や糖尿病の増加により重症かつ複合病変を有する傾向が強くなっている。下肢動脈閉塞(ASO)は、骨盤、大腿、下腿型閉塞の複合型が70%を占め糖尿病に見られるASOは下腿動脈の多発性閉塞(下腿型)を特徴とする。同時に冠動脈疾患を50%, 頭蓋内、外頸動脈狭窄病変を25%以上に合併している。このようなハイリスク重症虚血肢例の増加と相俟ってにより手術術式の低侵襲化がはかられる一方、QOLをできるだけ改善する手術が計画されるようになってきた。術前ジピリダモール負荷心筋シンチグラフィーと頸動脈系MRAによる術前評価が必須となっている。間欠性跛行あるいはABPI>0.4ならば二期的手術とし、合併主要臓器副病変に対する手術を優先する。有意の冠動脈病変はPCIを行い心危険因子を除去する。頭蓋外頸動脈狭窄とPCI非適応冠動脈病変の合併例はこれらの同時手術が行われ、前者を先に再建する。無症候性頭蓋内頸動脈有意狭窄例は血圧を100mmHg以下に下げない術中、術後管理が求められる。重症虚血肢で頭蓋外頸動脈病変や冠動脈の合併例では下肢バイパスと頸動脈内膜摘除やoff pump CABGの同時手術とし下肢バイパスは救肢のみとし、二期的に完全血行再建を行う。糖尿病・維持透析例は、下腿型閉塞を特徴とするので、その救足では足関節位下への自家静脈バイパスが必須である。また足趾壊疽を高率に合併するのでバイパスと同時に壊疽趾の切除が行われ、二期的に切断端の形成を行い救足を達成する。遊離植皮や遊離筋皮弁移植による断端形成により救足率の向上が得られている。