糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: BL-6
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レクチャー:糖尿病の成因と病態の解明に関する研究の進歩(1)
インスリン分泌調節機構
*稲垣 暢也
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抄録
グルコース刺激によるインスリン分泌機構として従来より代謝説が広く受け入れられている。すなわち、膵β細胞に取り込まれたグルコースが代謝され産生されたATPがインスリン分泌を促進するという説である。ATP感受性カリウム(KATP)チャネルは、細胞内のATPレベルによって開閉が調節されるカリウムチャネルであり、代謝説によるインスリン分泌機構において中心的役割を果たすと考えられてきた。同時に、KATPチャネルは経口血糖降下薬として広く用いられているスルホニル尿素薬の作用部位でもある。膵β細胞のKATPチャネルは内向き整流性カリウムチャネルのKir6.2とATP-binding cassette(ABC)タンパク質ファミリーの一つであるスルホニル尿素受容体(SUR1)の2種類のサブユニットのヘテロ8量体からなる。ノックアウトマウスを用いたこれまでの種々の研究によれば、KATPチャネルは膵β細胞のインスリン分泌機構だけでなく脳や心筋において虚血に対する防御機構として働いており、生体の代謝センサーとして機能していることも明らかになってきた。また、ヒトにおいては、膵β細胞のKATPチャネルを構成するKir6.2サブユニットやSUR1サブユニットの遺伝子異常により、高インスリン性低血糖症を引き起こすだけでなく、新生児糖尿病などの各種糖尿病を引き起こすことも明らかになってきた。本講演では、膵β細胞のインスリン分泌調節機構について、特にKATPチャネルを中心に最近の知見を概説する。
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© 2005 日本糖尿病学会
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