抄録
【はじめに】DECODE study、舟形スタディをはじめとして、食後高血糖が心血管リスクとして重要であることに関しては、いくつもの疫学成績が集積されている。しかし、2型糖尿病患者の食後高血糖に介入して、心血管系のイベントがどの程度減少するかについて検討した臨床データはない。そのなかにあって、DIS(Diabetes Intervention Study)は、新規2型糖尿病患者を経年的に追跡して食後高血糖と生命予後との関連を検討した臨床成績として注目される。【DISの概要】 DISは新たに2型糖尿病と診断された30歳から55歳の1,139人を対象に、心筋梗塞と総死亡に対するリスクファクターを検討した試験である。糖尿病患者を、(1)通常の治療、(2)集中的な患者教育、(3)集中的な患者教育とクロフィブレートによる治療の3群に無作為に分類し、11年間経過を追跡したところ、心筋梗塞を15.2%に認め、死亡患者は19.8%であった。心筋梗塞のリスクファクターは、年齢、喫煙、血圧であり、総死亡に対するリスクファクターは性(男性)、血圧、トリグリセリド、食後高血糖、喫煙であった。さらに、追跡調査の成績では、虚血性心疾患のリスクファクターは性(男性)、食後高血糖、トリグリセリド、血圧であると報告されている。【DISの臨床的意義】DISの成績によれば空腹時血糖値が良好であっても、食後1時間血糖値が180mg/dlをこえる場合には心筋梗塞の発症率は3倍以上となり、食後高血糖をコントロールすることで心筋梗塞の発症を回避するためのNNT(number needed to treat)は11.2であった。【おわりに】2型糖尿病患者においても食後高血糖と虚血性心疾患の関連が示唆されるが、DISは食後高血糖に介入した試験ではない。糖尿病患者の食後血糖に直接介入した臨床試験の結果が待たれる。