糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
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セッションID: CL-12
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レクチャー:糖尿病療養指導に必要な知識(2)
慢性合併症:腎症
*羽田 勝計
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抄録
糖尿病の増加と共に慢性血管合併症を有する症例も増加している。特に腎症は透析療法導入原疾患の第1位であり、2003年には全導入症例の41%を占めるに至っている。この現状を打破するためには、腎症の的確な評価と治療が重要である。一方、腎症のremissionが生ずることも報告されており、remissionをめざしたより厳格な血糖・血圧・脂質の管理が求められている。 腎症の診断は比較的簡単であり、スポット尿のアルブミンとクレアチニンを同時に測定し、30 mg/gCr以上を「微量アルブミン尿」、300 mg/gCr以上を「顕性蛋白尿」と定義している。診断上の問題点は、尿アルブミンが必ずしも定期的に測定されていないこと、および腎機能(GFR)が評価されていないこと、にある。GFRは通常Ccrで評価するがこのためには時間尿を採取することが必要であり、日常診療上簡便ではない。現在、血清クレアチニン値からGFRを計算する式が数種類考案されており、これらを用いることが良いと思われる。 腎症の治療法は、1.高血糖の是正(HbA1c値6.5%未満をめざした血糖コントロール)、2.糸球体高血圧の是正(レニン‐アンジオテンシン系阻害薬の使用と血圧値130/80 mmHg未満をめざした各種降圧薬の併用療法)、3.血清脂質の管理、4.マイルドな蛋白制限食、を集約的に行うことであり、長期間目標値を達成することによりremission(寛解)、regression(退縮)が生じえることが示されている。 療養指導にあたっては、生活習慣改善(食事、運動、禁煙、等)への積極的な介入、種々の薬剤の的確な服薬指導、が極めて重要と考えられる。血糖コントロールをめざした療養指導は腎症を合併しない場合とほぼ同様であるが、腎症の場合は食塩・蛋白制限が加わってくる。腎症の診断に24時間尿の採取は必要ないが、食塩・蛋白制限を的確に指導するためには24時間尿を用いた評価が重要となる。 食塩摂取量(g/日)=Na排泄量(mEq/日)÷17 蛋白摂取量(g/日)=[UN排泄量(g/日)+0.031×体重(kg)]×6.25という式が通常用いられている。 現時点で、少なくとも顕性腎症前期まではremission、regressionが可能であることを認識し、積極的できめ細かい療養指導を行うことが今必要であると考えられる。
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© 2005 日本糖尿病学会
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