家族研究年報
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シンポジウム報告
子どもの権利を基盤にした児童福祉を考える
―10代ママの地域生活を手がかりにして―
森田 明美
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2014 年 39 巻 p. 17-36

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抄録
    日本は、長く家庭に家族の地域での暮らしの支えを委ね、どうしても家庭で暮らせなくなると病院や施設を利用して、その問題を解決してきた。1980年代施策化が進んだ高齢者福祉は、地域福祉という社会福祉の分野を利用して課題はあるにせよ展開してきた。地域で暮らしたいという障がい者もまた地域福祉施策として取り組まれてきている。
    それに対して子どもの福祉は、家族依存から抜け出られない。子どもの貧困やいじめは深刻化し、とうとう単独の法律が作られるに至っている。都道府県の児童相談所を中心にして展開してきた保護的な児童福祉施策は量的に不足し、基礎自治体での取り組みにはなかなか移行しない。そうした中で地域の中心的な事業になるべき地域育成事業である児童館は貸館と化し、保育所も都市部では待機児があふれている。この状態では、こうした地域の施設に保護が必要になった子どもの回復への支援や、保護に至る前に予防的な支援を期待することはできない。
    養育課題を抱える子どもや子育て家庭の地域生活は、危機的な状況にある。児童福祉政策の課題を自己責任として背負わされる子どもたちの苦しさを私たちはどのように解決していくのかについて、子どもでありながら子育てをするという子育て支援の対象となっている10代ママの子育てと支援課題を例に考えてみたい。
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© 2014 家族問題研究学会
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