家族研究年報
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「痛み」と共にある支援
―東日本大震災における親族里親等支援事業の意義―
和泉 広恵
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キーワード: 里親, 親族養育, 被災者支援
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2014 年 39 巻 p. 37-53

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抄録

    本論文は、岩手県の親族里親等支援事業の実践を通して、震災支援における「支援者-被支援者」の関係性のあり方について追究することを目的としている。この事業は、岩手県里親会が震災以降に親族養育者となった人に対して、被災地でサロンを開催する事業である。2011年10月から始まり、現在も継続している。
    本論文では、里親会会長へのインタビューと事業のフィールドワークを元に、この事業の意義について、分析を行った。調査から示されたのは、里親が近親者の死という親族養育者の「痛み」に衝撃を受けたことと親族養育者に対して控えめな支援を行っていることであった。控えめな支援とは、震災ボランティアとも当事者同士とも異なる、親族養育者の「痛み」にただ寄りそうという支援である。また、支援の背景には、震災後に生じた「岩手」という領域の構築と支援を行う過程で示された子どもの受け皿としての「里親」の役割があることが明らかになった。

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© 2014 家族問題研究学会
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