地球科学
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関東山地,ミカブ緑色岩類に累重する砕屑岩層 ―西御荷鉾層の起源と堆積環境―
関東山地団体研究グループ
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2002 年 56 巻 6 号 p. 333-346

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抄録

関東山地北部の東御荷鉾山および西御荷鉾山周辺には,三波川帯ミカブユニットのミカブ緑色岩類が分布する.ミカブ緑色岩類の上位には砕屑岩層がみられ,西御荷鉾層と命名した.この西御荷鉾層は下位から,赤色泥岩,珪質岩類,砂岩シルト岩互層およびシルト岩から構成される.赤色泥岩は,ミカブ緑色岩類の玄武岩質凝灰角磯岩の上に整合で重なる場合,玄武岩質凝灰角礫岩と互層する場合,ミカブ緑色岩類最上部の玄武岩質凝灰角礫岩や西御荷鉾層の珪質岩類に珪質な赤色泥岩としてはさまれる場合がある.したがって,西御荷鉾層はミカブ緑色岩類と整合一連であり,三波川帯に所属することが明らかとなった.西御荷鉾層最下部の赤色泥岩は赤鉄鉱や黒色不透明鉱物を多量に含み,ミカブ緑色岩類の火山活動に関連した熱水による酸化的な環境で堆積したと考えられる.赤色泥岩にはジュラ紀新世を示す放散虫化石が含まれていることから,ミカブ緑色岩類火山活動の終息時期はジュラ紀新世である.また,赤色泥岩には自形の石英結晶粒子が含まれている.この結晶および西御荷鉾層中に挟まれる珪長質凝灰岩の起源は,アジア大陸東縁におけるジュラ紀新世,燕山変動期の中〜珪長質火山活動の火山灰の可能性がある.ミカブ緑色岩類の火山活動および西御荷鉾層の堆積場は当時のアジア大陸東縁からそれほど遠くない位置と推定される.

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© 2002 地学団体研究会
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