2002 年 56 巻 6 号 p. 347-358
埼玉県秩父盆地新第三系桜井層に大露頭があらわれ,数多くのカレントリップルマークが観察された.研究地域の堆積相は,礫岩(Cg),含礫砂岩(Sp),塊状砂岩(Sm),砂岩泥岩互層(I)および砂岩泥岩細互層(Im)の5つに区分される.これらの堆積相の特徴から堆積環境は,上部〜中部海底扇状地のチャネル・レビーシステムで解釈される.リップルマークは砂岩泥岩互層(I)に集中的に出現することから,上部〜中部海底扇状地の自然堤防,および,すでに埋積されたチャネルを覆った堆積層に形成されたことが考えられる.また,リップルマークはブーマシーケンスのカレントリップル部(C)に相当し,流痕とリップルマークの示す古流向はほぼ同じである.これらのことから,リップルマークは低密度重力流による一連の堆積作用で形成されたものと考えられる.