抄録
インフレターゲット2%水準を目指す金融政策と10 年間で200 兆円規模の社会資本整備を目指す財政政策が象徴する新政権の経済政策,いわゆる「アベノミクス」への期待と不安が交錯しながら2012 年は幕を閉じた。そして政策の実行を督促するかのように,為替・株式市場は一足早く円安・株高に大きく振れて2013 年が幕を開けた。しかしながら,金融緩和や財政出動といった景気てこ入れ策は「失われた20 年」において,規模の問題は別として,幾度となく実施されてきたことであり,とりわけ奇をてらったものではない。従って,その効果を訝る声も聞かれる。
以下では,行き場のない資金が金融機関にだぶついて金融政策の効果が低迷している様子を概観し,従来と同様の財政政策とは異なる社会資本整備が求められている現状を考える。そして,九州における新社会資本整備の課題について検討する。