抄録
本研究では,「経営・管理」または「高度専門職1 号ハ」のビザ(在留資格)を持つ在留
外国人に関する統計などに基づいて,日本における外国人(外国籍)企業家の都道府県分布
の影響要因を分析し,各地の外国人創業促進政策の効果を検証する。2015~19 年のパネル
データと固定効果モデルを用いて分析した結果によると,都道府県の「経営・管理」ビザ所
持者数や「高度専門職1 号ハ」ビザ所持者数に対して,(地域マーケットの規模と成長性を
示す)「地域総人口」,「1 人当たり地域総生産」,および「地域のインバウンド観光客数」は
いずれも統計的に有意なプラスの影響を与えている。一方,地域の外国人創業促進政策は,
「経営・管理」ビザ所持者数に対して統計的に有意なプラスの影響を与えているが,「高度専
門職1 号ハ」ビザ所持者数への影響は統計的に有意ではない。また,都道府県の外国人企業
家の年増加率に対しても,地域の外国人創業促進政策はプラスの影響を与えているものの,
統計的に有意ではない。
外国人創業促進政策の導入時間はまだ短いので,その効果についてはより長い期間を対象
に検証し続ける必要がある。現段階の分析結果を見ると,外国人の創業をさらに活発にさせ
るためには,まず,規制緩和などを通じて,日本の持続可能な発展に寄与する成長分野と投
資需要を一層開拓・創出する必要がある。また,各地の発展ビジョン・創業優遇政策に関す
る情報を国内外に効果的に発信するとともに,国内在住の留学生を中心に創業支援活動を展
開すべきである。