抄録
本稿は,スタートアップ・エコシステム研究における「起業アクター」と「支援アクター」の2セグメント枠組みを援用し,中国 注1)における各アクターの数量とその推移を明らかにすることで,中国の起業生態(本稿では「スタートアップ・エコシステム」と呼ぶ)の全体像を描出することを目的とする。
まず,起業アクターの状況を確認する。起業家の動向に着目すると,民間起業活動の活発さは長期的に低下傾向にあり,2000年代には世界上位であったものが,現在では下位に位置している。スタートアップの概念に完全に対応する統計は存在しないものの,新設企業数や新規登録市場主体数を見る限り,2023年前後までは急速な増加が続いたものの,その後は増加傾向が続きつつも減速局面にある。ただし,スタートアップの中でも成功を収めたユニコーン企業は,世界的にも高い実力を示している。
次に,支援アクターの状況を概観する。2014年の国家級の「双創」戦略の開始により,科技企業インキュベーターと衆創空間の設立は急速に拡大したが,関連する支援策には継続性の課題がみられる。投資者については,民間投資者によるスタートアップ投資が2021年をピークに以降は減少傾向を示している。政府投資基金のうちスタートアップ支援に充てられる割合は約1 割にとどまり,十分とは言えない。大学・研究機関の役割は近年強化されつつある。