日本建築学会計画系論文集
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ミース・ファン・デル・ローエの1930年代前期住宅建築の設計過程における特質(1) : ゲリッケ邸案における透視図の意義
カスティジョ ファン ルフィノ杉本 俊多
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2002 年 67 巻 557 号 p. 361-366

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抄録

本論文はミース・ファン・デル・ローエが1930年代に行った住宅建築の設計案についてその設計過程を分析し、ミースの設計手法における特性を明らかにしようとする一連の研究のうち、ゲリッケ邸(1932年)の設計過程におけるスケッチを、CADを用いて三次元復元する新しい分析方法を試みつつ、設計方法と設計内容を解明しようとするものである。スケッチは鳥瞰図とアイレベル透視図に分類でき、CADを用いて軸測投象図と透視図として出力し、原透視図と比較した。設計過程は6段階に分類整理することができた。そこでは玄関、居間、庭の間の領域処理を通しての内外空間の融合といったミース独特の手法が的確に確認できた。また4つの透視図の分析を通して、水平に広がる広角の眺望を好んだこと、深い奥行方向の見通しを強調して表現すること、理想的な眺望を阻害する空間要素を省略して表現すること、視点位置を自由に設定して現実にはない眺望も描いていたこと、といった特徴を見出すことができた。以上のような特徴はこれまであまり扱われなかったミースの独特の設計手法を明らかにするものであり、またCADによる三次元データ化、透視図作成を通しての多様な画像作成と原透視図の詳細な比較分析を通して初めて明確化することができるものであって、本研究の研究方法上での成果である。

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© 2002 日本建築学会
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