日本建築学会計画系論文集
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北京集合住宅居住者による対話型インテリアデザイン手法の評価実験
黄 蔚欣松下 大輔宗本 順三
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2008 年 73 巻 624 号 p. 295-302

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抄録
北京集合住宅居住者に対話型インテリアデザイン手法の評価実験を行った。デザインの専門家でない中国人居住者が自らインテリアデザインを行う場合の、CGを用いた対話型進化計算の有効性を確かめた。そして対話型インテリアデザイン手法を実用化する際の問題点を明らかにした。現地実験は1ヶ月間にわたり、231人の集合住宅居住者に対して行われた。実験結果の分析により、本論の対話型インテリアデザイン手法は、デザインの専門家でない集合住宅居住者にとっては有効であるが、より高いデザイン手腕を持つ者にとっては、遺伝的アルゴリズムオペレータに任せるだけでなく、自らデザインプロセスを意図的にコントロールしたいと思うため、手法に対してより低い評価を下すことが分かった。被験者が、より高齢で、より低い教育水準で、より低い家計収入であるほど、対話型インテリアデザイン手法を高く評価する傾向があった。性別の影響は小さかった。多くの人はインテリアデザインに、強いインパクトや情熱よりも、快適やリラックスを求めていた。あるデザインの専門家は、顧客の嗜好がわかるので、顧客とデザイナーとの間のコミュニケーションの道具として有効であるが、言語を用いた表現方法等のより直接的な方法も同時に有効であると言った。本手法の欠点としては、現実のインテリアに存在する数多くのデザイン要素を扱える訳ではない点、現実空間を十分正確に再現していない点、終盤の世代では提示される案が類似してくる点、視覚的疲労等が挙げられた。実験で生成された画像の分析の結果、案の進化の過程で、世代を経るに従い、インテリアの各部位の明度の相関が大きくなって行くことが確かめられた。相関係数はあまり大きくないが、好みのインテリアの色の組み合わせについての規則性が創発的に生じることが、対話型インテリアデザイン手法の過程において明らかになった。
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© 2008 日本建築学会
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