抄録
前報, 前々報では, 動的模型を用いた風洞実験により標準的な高層建築物の捩り振動の性状について調べた。今回はその結果を踏まえて, 捩り振動に重要な影響を及ぼすと思われる側面の変動風圧力の性状について, 捩りモーメント算定という観点から整理・考察した。以下にその主な結果を示す。i)変動風圧係数は下方に向って緩やかに増加し, 勾配のない流れで0.1〜0.25, 勾配流で0.3〜0.4である。ii)パワー・スペクトルは, 勾配のない流れの場合nD/U≒0.1でカルマン渦の鋭いピークを示すが, 勾配流では最大値を示す程度で緩やかな分布を示す。勾配のない流れでは風下に行くにつれて高周波成分にエネルギーが移行する。iii)圧力変動は大体において水平方向に移動的であり, 伝達速度U_cは勾配のない流れでU_c=0.58U, 勾配流でU_c=0.34U_H程度である。水平方向のルート・コヒーレンスは(片対数表示で)必ずしも直線的に低下しない。iv)鉛直方向のルート・コヒーレンスは(片対数表示で)直線的に低下し, 位相差は一部を除けば殆ど0である。v)相対側面の相関は, 勾配のない流れのカルマン渦の発生するnD/U≒0.1で強い負の相関が見られる外は総じて小さい。