日本建築学会論文報告集
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SRC 枠付き耐震壁の弾塑性性状に関する研究 : その 1 間接実測値からみた枠の拘束効果
今井 弘小杉 一正
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1979 年 280 巻 p. 91-100

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抄録
頂部に水平力を受ける鉄骨鉄筋コンクリート造の枠付き耐震壁に対し, 直接実測したひずみと節点外力を基に変形と応力に関する間接実測値を解析した。その結果を要約すると次のようになる。1)壁コンクリートや周辺枠がひびわれする前は, 壁板はほぼ純せん断応力状態であり, 枠や壁のひずみと応力はほぼ逆対称に分布している。2)壁板がひびわれすると壁板は圧縮場を形成し周辺枠は壁板を拘束する役目を果すため枠の引張応力はかなり大きくなる。3)壁板がひびわれした後のせん断力の大部分は枠によって拘束された壁コンクリート斜材によって負担され, 壁筋はほぼコンクリートの引張強度に等しいせん断力を負担する。又いわゆるラーメン変形によって負担するせん断力はわずかである。4)柱の軸応力-軸ひずみ関係は, 圧縮応力時には枠のコンクリートを含めた全断面有効な剛性線上にあるが, 引張応力時には繰り返し応力を受けるに従い, 鉄骨と鉄筋だけの剛性線上に近づく。5)柱の曲げ剛性は軸応力の状態によって変わり, 引張応力時にはほぼ鉄骨と鉄筋のみの剛性に近づくが, 圧縮応力時にはコンクリートもかなり有効に働く。6)柱のせん断剛性も軸応力の状態によって変わり, 圧縮応力時には全断面有効な剛性に近いが, 引張応力時にはかなり低下する。しかしその低下の程度は曲げ剛性の低下ほど激しくなく, せん断応力に対してはコンクリートもかなり有効に働く。また, 間接実測値の解析法に対して次の結論を得る。7)変形の間接実測値の解析誤差率e_1は各試験体とも大変小さく0.05〜0.15程度である。8)応力の間接実測値の解析誤差率e_2は初期段階では各試験体とも小さい。加力を繰り返すと柱鉄骨断面が小さい試験体ではe_2=0.25〜0.30に達し解析結果に対する信頼性が低下する。今後, 剛性の拘束条件をもっと事実に近づける工夫が必要であると思われる。これらの間接実測値を仮定として行なった理論解析結果については次の機会に報告する予定である。
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© 1979 一般社団法人日本建築学会
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